キャリアコンサルタントの矢野誠一です。
大手人材紹介会社で10年ほど、金融・投資業界を専門に転職支援をしていました。
現在は独立して、個人向けのキャリア相談と企業の採用コンサルティングをやっています。
ここ1〜2年、相談者の方からこんな声をよく聞きます。
「資産運用に関わる仕事に興味があるんですが、実際どうなんですか?」
「金融って難しそうだけど、未経験でも入れる会社ってあるんですか?」
正直に言います。
今、資産運用ビジネスに関わる仕事は面白いフェーズに入っています。
業界の中にいた人間だからこそ、肌感覚としてそう断言できます。
この記事では、なぜ今このタイミングで資産運用ビジネスが「仕事として面白いのか」を、転職市場を見てきたプロの目線で3つに絞ってお伝えします。
業界未経験の方にも分かるように書きますので、気軽に読んでみてください。
目次
そもそも「資産運用ビジネス」ってどんな仕事があるのか
まず前提として、資産運用ビジネスに関わる仕事は想像以上に幅が広いです。
多くの方は「証券会社」や「銀行の窓口」をイメージするかもしれません。
もちろんそれも含まれますが、実際にはもっと多様な選択肢があります。
- 証券会社・銀行の営業やアドバイザー
- 投資信託・資産運用会社のファンドマネージャーやアナリスト
- 保険会社のライフプランナー
- 不動産投資会社の営業やコンサルタント
- 貴金属(金・プラチナなど)の投資商品を扱う会社の営業
- IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
- フィンテック企業のサービス開発や営業
ざっと挙げただけでもこれだけあります。
共通しているのは「お客様の資産を守り、増やすことに関わる仕事」だということ。
エージェント時代、私が特に担当していたのは証券・銀行系と貴金属系の営業職でした。
どちらも「お客様の人生に深く関わる仕事」という点では同じですが、扱う商品や顧客層がまったく違う。
だからこそキャリアの選択肢として面白いんです。
参考までに、主な職種ごとの特徴を簡単にまとめてみます。
| 職種 | 扱う商品 | 未経験者の入りやすさ |
|---|---|---|
| 証券会社の営業 | 株式・投資信託・債券 | やや難(資格が必要な場合あり) |
| 銀行の資産運用アドバイザー | 投資信託・保険・預金 | 中程度(銀行経験者が有利) |
| 保険のライフプランナー | 生命保険・年金保険 | 入りやすい(未経験採用が多い) |
| 貴金属投資の営業 | 金・プラチナ・地金 | 入りやすい(未経験歓迎の企業が多い) |
| IFA | 幅広い金融商品 | 難(実務経験が前提) |
もちろん企業によって差はありますが、おおまかな傾向として参考にしてみてください。
そしてこの業界全体が、今まさに大きく動いています。
その理由を順番にお話しします。
理由1:「資産運用立国」という国策の追い風
1つ目の理由は、国が本気で資産運用の普及に乗り出していることです。
2024年に始まった新NISA制度は、皆さんもご存じでしょう。
金融庁のNISA特設ウェブサイトによると、2025年6月末時点でNISA口座数は2,696万口座に達しています。
総買付額は59兆円規模。
つみたて投資枠の継続保有率は94.2%と、「始めた人がやめない」という健全な数字が出ています。
さらに2026年度の税制改正では、0〜17歳を対象とした「こどもNISA」の導入も決まりました。
つまり、投資の裾野は子どもの世代にまで広がろうとしています。
ちょっと立ち止まって考えてみてください。
10年前、「投資は怖い」「貯金が一番」と言っていた人たちが、今はスマホでNISA口座を開設している。
この変化のスピードは、業界の中にいた人間から見ても驚くほどです。
これは単なる一過性のブームではありません。
「資産運用立国」は特定の政党の政策ではなく、国家戦略として位置づけられています。
少子高齢化で年金制度の持続性に不安がある以上、「自分の資産は自分で作る」という方向性は今後も変わらないでしょう。
業界にとってこれが何を意味するか。
答えはシンプルで、パイが大きくなるということです。
投資を始める人が増える。
それに比例して、資産運用の相談に乗れる人材、商品を提案できる人材の需要も増える。
転職市場を日々見ている私の実感としても、2025年以降は金融業界の求人が明らかに底堅くなっています。
特に注目したいのは、富裕層向けのウェルスマネジメント領域です。
メガバンクや大手証券が相次いでこの分野の専門人材を強化しており、異業種からの転職組も積極的に採用しています。
「投資に興味がある層」がここまで増えた以上、この流れは数年で終わるものではないでしょう。
理由2:金価格の高騰が示す「実物資産ビジネス」の伸びしろ
2つ目の理由は、金をはじめとする実物資産への注目度が急激に高まっていることです。
数字で見ると一目瞭然です。
田中貴金属工業の年次金価格データによると、金の年間平均価格は以下のように推移しています。
| 年 | 年間平均価格(税抜・円/g) |
|---|---|
| 2020年 | 6,122円 |
| 2021年 | 6,402円 |
| 2022年 | 7,649円 |
| 2023年 | 8,834円 |
| 2024年 | 11,718円 |
| 2025年 | 17,302円 |
5年間で年間平均価格が約2.8倍。
2025年9月には、田中貴金属の店頭小売価格が史上初めて1gあたり2万円台を突破しました。
この上昇は投機的なバブルではなく、構造的な要因に支えられています。
- 世界各国の中央銀行が外貨準備として金を買い増している
- ウクライナや中東など地政学リスクの長期化
- インフレ局面で「通貨の価値が目減りしない資産」として金が選ばれている
こうした背景から、株式や投資信託とは別の「第三の選択肢」として、金やプラチナなどの貴金属投資に目を向ける個人投資家が増えています。
私がエージェント時代に担当していた貴金属系企業の求人は、当時はニッチな存在でした。
「金を売る仕事?ちょっとイメージが湧かない」と言われることも多かった。
それが今、金価格の高騰をきっかけに問い合わせが急増しているという話を、複数の企業から聞いています。
純金積立、地金売買、貴金属の資産コンサルティング。
こうしたサービスを提供する企業は、顧客の増加に伴って採用を強化しているところが少なくありません。
「金は持っておいた方がいい」という認識が一般層にまで浸透したことで、営業のしやすさも格段に変わったと、現場の方は口を揃えます。
もちろん、金価格が永遠に上がり続ける保証はありません。
調整局面が来る可能性は常にあります。
ただ、金という資産への関心が「一過性のブーム」で終わらない構造的な裏付けがある以上、この分野の仕事はしばらく需要が続くと見ています。
株式一辺倒だった資産運用の選択肢が広がることで、そこに関わる仕事の種類も増えている。
これが2つ目の「面白い」理由です。
理由3:未経験でも飛び込める環境が整ってきた
3つ目の理由。
個人的には、これが一番大きいと思っています。
「金融業界はハードルが高い」
「専門知識がないと入れない」
「証券外務員の資格がないとダメでしょ?」
転職相談でこう言われる方、本当に多いです。
気持ちは分かります。
10年前だったら、その認識はある程度正しかった。
でも、今の採用市場を見ると、状況はかなり変わっています。
背景にあるのは、業界全体の人材不足です。
新NISAの影響で投資人口が急増し、顧客対応の最前線に立つ営業職やアドバイザー職の採用ニーズが膨らんでいます。
大手企業を中心に人事制度の改定も進み、「未経験者を育てる」という方針に切り替えた企業が増えてきました。
資格は入社後に取得支援してくれる会社も多く、「資格がないから応募できない」という時代ではなくなりつつあります。
実際の例を1つ挙げます。
純金積立サービス「ゴールド積立くん」を展開する株式会社ゴールドリンクの採用情報ページを見ると、求める人物像として「素直に真似できる人」「やり遂げられる人」「挑戦し続けられる人」の3つが掲げられています。
金融の専門知識や営業経験は条件に入っていません。
実際に「金融知識や営業経験なく入社した先輩が多数在籍」と明記されており、未経験者を積極的に受け入れている姿勢が読み取れます。
同社は東京本社のほか大阪・名古屋・仙台・福岡・札幌と全国6拠点を展開しており、地方在住の方にも選択肢があるのもポイントです。
営業手当や表彰・インセンティブ制度が豊富で、成果が明確に報酬に反映される仕組みが整っている。
「何をすればどう評価されるか」が見えやすい環境は、未経験者にとって特にありがたい。
こうした企業は珍しくなくなってきています。
成果に応じたインセンティブ制度を整備し、入社後の教育体制を充実させることで、未経験者でもキャリアを積み上げられる環境を作る。
業界全体がそちらの方向に動いているのは、転職市場を毎日見ている身として強く感じるところです。
よく「前職が全然違う業界なんですが大丈夫ですか?」と聞かれます。
結論から言うと、営業職に関しては前職の業界はほとんど関係ありません。
むしろ、飲食業や小売業で「お客様の話を聞く」経験を積んだ方が、資産運用の営業で活躍しているケースを数多く見てきました。
お客様の不安や希望を丁寧に聞き出す力は、どの業界でも通用するスキルです。
大事なのは「金融の知識があるかどうか」ではなく、「学ぶ意欲があるかどうか」。
知識は入社後にいくらでも身につきます。
でも、人の話を聞く姿勢や粘り強さは、簡単には身につかない。
だからこそ、採用側は「人柄」や「姿勢」を重視する傾向が強まっています。
資産運用ビジネスへの転職で押さえておきたいポイント
ここまで読んで「面白そうだ」と思った方に向けて、実際に転職を検討する際のポイントを整理しておきます。
キャリアコンサルタントとして800人以上の転職を見てきた中で、うまくいく人とそうでない人の差はここに出ます。
市場が伸びている分野かどうか
当たり前のようですが、最も大切な視点です。
伸びている市場にいれば、個人の努力がそのまま成果につながりやすい。
逆に縮小市場では、どんなに優秀でも苦しい戦いになります。
この記事で紹介したように、資産運用の市場は国策レベルで拡大中です。
その中でも、NISAや投資信託に限らず、金やプラチナといった実物資産分野にも注目してみてください。
選択肢を広く持つことで、自分に合った仕事が見つかる確率は上がります。
評価制度が明確かどうか
営業職を検討している方は、ここを必ず確認してください。
- 何をどれだけ達成すれば、いくらの報酬になるのか
- インセンティブの計算方法は明示されているか
- 評価基準が曖昧な「がんばれば報われる」ではなく、数字で示されているか
これらが不透明な企業は、入社後に「思っていたのと違う」となるリスクが高いです。
求人票や面接の段階で、遠慮なく聞いてください。
教育体制があるか
未経験から飛び込む場合、最初の半年〜1年でどれだけ学べるかが勝負です。
OJTだけでなく、体系的な研修プログラムがあるか。
先輩社員のサポート体制はどうか。
採用ページや面接で、具体的なエピソードを聞いてみるのが一番確実です。
「先輩に聞けば教えてもらえます」と言う企業は多いですが、それだけでは不十分。
マニュアルやロールプレイング、定期的な勉強会など、仕組みとして教育が回っているかどうかを見極めてください。
仕組みがある会社は、未経験者の定着率も高い傾向にあります。
会社の規模だけで判断しない
「大手の方が安心」という気持ちは分かります。
ただ、資産運用業界に限って言えば、中小企業にも魅力的な選択肢がたくさんあります。
大手は組織が大きい分、個人の裁量が限られることが多い。
一方、中小企業では入社直後から幅広い業務を任されることがあり、短期間でスキルの幅が広がります。
「3年後にどんな自分になっていたいか」を基準に、会社規模にとらわれず検討してみてください。
まとめ
資産運用ビジネスに関わる仕事がこれから面白い理由を3つ、お伝えしました。
- 「資産運用立国」という国策の追い風で、業界全体のパイが拡大している
- 金価格の歴史的高騰に象徴される実物資産への注目が、新しい仕事を生んでいる
- 未経験からでも飛び込める採用環境が整いつつある
10年間この業界の転職を見てきた立場から言えば、今は「入り時」です。
もちろん、どんな仕事にもリスクはあります。
楽して稼げる業界なんて存在しません。
市場環境が良くても、結局は自分の行動量と学ぶ姿勢がモノを言います。
ただ、追い風が吹いている分野で、実力次第でキャリアを切り開ける環境がある。
それだけで、挑戦する価値は十分にあると私は考えています。
気になる方は、まずは興味のある企業の採用ページを覗いてみるところから始めてみてください。
求められている人物像や働き方を知るだけでも、「自分にもできそうだ」と感じるかもしれません。
思っている以上に、門戸は開かれています。





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