夜明け前の霧がまだグリーンに残る、ひんやりとした朝。
6番ホールのティーイングエリアに立つと、遠くで潮騒の音が聞こえてきた。
かつてITベンチャーの役員だった私にとって、ゴルフはスコアだけを追い求める無味乾燥な「接待ツール」でした。
人生を賭けた契約がかかったラウンドでOBを連発し、すべてを失ったあの日までは。
失意の中、私はスコアカードを捨て、ゴルフが持つ本当の「物語」を探す旅に出ました。
そして全国1,128のコースを巡り、ようやく気づいたのです。
ある特定のコースが、驚くほど仕事の、そして人生の「レッスン」に満ちていることに。
その場所こそ、埼玉に佇む「オリムピックナショナルゴルフクラブ」です。
本記事では、元ビジネスマンとしての私の惨めな失敗と、ゴルフ探訪家としての発見を基に、このコースがなぜあなたの仕事に効くのか、その理由を具体的にお話しします。
これは単なるコースガイドではありません。
あなたのゴルフとビジネスを、次のステージへ導くための「新しい地図」です。
目次
なぜ「オリムピックナショナル」なのか?元ビジネスマンが語る唯一無二の価値
接待ゴルフの失敗が教えてくれたこと
今でも、あの日の空の青さと、手のひらの嫌な汗を思い出します。
会社員人生のすべてを賭けた、大型契約の最終局面。
舞台は、名門と呼ばれるゴルフコースでの接待ゴルフでした。
「絶対に負けられない」「良いスコアを出さなければ」。
そのプレッシャーは鉛のように重く、私のスイングを蝕んでいきました。
結果は、惨憺たるもの。
OBを連発し、笑顔は引きつり、会話も上の空。
当然、契約は破談。
私は、ゴルフでもビジネスでも、すべてを失いました。
あの時の私に欠けていたのは、スコアという数字の向こう側にある、もっと大切な何かでした。
それは、コースと、そして同伴者と「対話」する姿勢です。
目先の利益だけを追うゴルフがいかに脆いか、私は身をもって知ったのです。
1,128コースを巡り見つけた「ビジネスの縮図」
会社を辞め、全国のコースを巡る旅に出てから、様々な「顔」を持つゴルフ場に出会いました。
その中でもオリムピックナショナルは、ひときわ異彩を放っていました。
なぜなら、このコースにはビジネスの世界と酷似した「縮図」が広がっていたからです。
それは、単に美しいとか、難しいとかいう次元の話ではありません。
設計思想の深さ。
厳しさと優しさが同居する自然との調和。
そして、プレイヤーに挑戦と許容を同時に求める絶妙なバランス。
これらはすべて、私たちがビジネスの現場で日々直面する、複雑な意思決定や人間関係の構築そのものでした。
このコースは、私たちに問いかけてくるのです。
「あなたはこの状況をどう読み、どう決断するのか?」と。
もちろん、これは私一人の感想ではありません。
実際にプレーした多くのゴルファーが、このコースの奥深さについて語っており、様々なオリムピックナショナルのコースに関する口コミを見ても、その評価の高さがうかがえます。
戦略的思考を鍛える「EASTコース」- 盤面を読む力
設計家の罠か、それとも導きか
オリムピックナショナルのEASTコースは、まるで熟練の経営コンサルタントのようです。
一見すると美しく、広々として見えるフェアウェイ。
しかし、そこには巧妙に「罠」が仕掛けられています。
巧みに配置されたバンカーは、さながら「市場に潜む障壁」。
美しくも冷徹な池は、抗いがたい魅力を持つ「競合の甘い誘い」。
そして、ポテトチップスのように複雑にうねるグリーンは、一筋縄ではいかない「顧客の心」そのものです。
ここで求められるのは、ただ力任せにボールを飛ばすことではありません。
リスクとリターンを冷静に分析し、時に遠回りに見える安全なルートを選択する、盤面を読む戦略的思考です。
それはまさに、事業計画を練り、市場を分析する経営者の思考プロセスと重なります。
私の心を動かしたキーホール「7番パー5」
EASTコースの中でも、特に私の心を動かしたホールがあります。
それが、7番のパー5です。
ティーイングエリアに立つと、フェアウェイは大きく右にドッグレッグし、その先には池が口を開けて待っています。
最短ルートを狙うなら、池越えの2オンチャレンジ。
しかし、それはあまりにもリスクが高い。
かつての私なら、迷わずドライバーを握りしめ、無謀な挑戦をしていたでしょう。
しかし、その日の私は違いました。
風の声を聴き、コースの囁きに耳を澄ましました。
そして、一見遠回りに見える、フェアウェイの左サイドへ着実に刻む道を選んだのです。
結果、3打目で楽々とグリーンに乗せ、パーをセーブすることができました。
このホールが教えてくれたのは、ビジネスの世界でも同じだということ。
派手な一発逆転を狙うのではなく、着実に、しかし確実に駒を進めることの重要性。
最も確実な道は、時に最も退屈な道に隠されているのです。
人間関係の本質が見える「WESTコース」- 信頼を築く力
スコアよりも大切な「同伴者の呼吸」
EASTコースが「戦略」を教えてくれるなら、WESTコースは「人間関係」の本質を語りかけてきます。
こちらは比較的フラットで、一見すると穏やかな表情をしています。
しかし、巧みなアンジュレーション(起伏)が、ボールを思わぬ方向へと誘います。
このコースは、まるで人と人との繊細な距離感のようです。
自分の思い通りに進もうとしても、見えない傾斜がそれを許さない。
大切なのは、自分本位にならず、相手(コース)の状況をよく観察し、その呼吸に合わせること。
これこそ、接待ゴルフや社内調整で最も求められるスキルではないでしょうか。
自分のスコアに一喜一憂するのではなく、同伴者のプレーに心を配り、その場の空気を読む。
WESTコースを歩いていると、自然とそんな気持ちにさせられます。
真の信頼関係は、スコアを超えた場所で築かれることを、このコースは静かに教えてくれます。
「ナイスショット!」の裏にある想いを聴く
かつての私は、接待相手がナイスショットを打てば、ただマニュアル通りに「ナイスショット!」と叫んでいました。
しかし、その声に心はこもっていませんでした。
頭の中は、自分の次のショットと、契約のことでいっぱいだったからです。
WESTコースでのプレーは、そんな過去の自分を省みる時間を与えてくれます。
本当に大切なのは、単なる声かけではありません。
相手がどんな想いでその一打を放ったのか。
成功の裏にある努力や、失敗の裏にある悔しさに、そっと寄り添う姿勢です。
相手のプレーや心情を深く理解しようと努めること。
その小さな共感の積み重ねが、やがて大きな信頼という名の橋を架けるのです。
スコアカードには書けない「19番ホール」の価値
クラブハウスは最高のビジネスラウンジ
ゴルフは18ホールで終わりではありません。
むしろ、本当の価値はプレーを終えた後の「19番ホール」、つまりクラブハウスでのひとときにあります。
オリムピックナショナルのクラブハウスは、そのための最高の舞台を用意してくれます。
重厚感のある空間で、今日のプレーを振り返る。
「あのバンカーには手こずりましたね」「あのホールの景色は本当に美しかった」。
そんな何気ない会話の中にこそ、相手の素顔や本音が隠されています。
緊張感のある会議室では決して聞けない、貴重な言葉がそこにはあるのです。
感動を共有することが、次の仕事に繋がる
ビジネスは、最終的には人と人との繋がりです。
そして、その繋がりを最も強くするのは「感動の共有」に他なりません。
今日のラウンドでどんな素晴らしい体験をしたか、どんな美しい景色に出会ったか。
その感動を分かち合うことで、相手は「接待相手」から「同じ旅をした仲間」へと変わります。
スコアカードに、この感動は書き残せない。
数字や結果ではなく、共に過ごした時間の「体験」を共有すること。
それこそが、次のビジネスへと繋がる、何より確かな一歩となるのです。
よくある質問(FAQ)
Q: 接待ゴルフで最も気をつけるべきことは何ですか?
A: 元ビジネスマンとして断言しますが、スコアで相手に勝つことではありません。
大切なのは、相手が心から楽しめる時間と空間を創り出すこと。
そのためには、コース戦略よりも相手の表情や言葉に注意を払い、「対話」を楽しむ姿勢が何より重要です。
Q: スコアが悪くても、仕事に繋げることはできますか?
A: むしろ、チャンスです。
私の失敗談がそうであったように、完璧ではない姿を見せることで、人間的な魅力や信頼に繋がることがあります。
ミスショットを笑いに変えるユーモアや、真摯に学ぶ姿勢こそが、ビジネスでは強力な武器になります。
Q: オリムピックナショナルは初心者には難しいでしょうか?
A: 確かに戦略的なコースですが、スコアを追い求めなければ、初心者の方でも十分に楽しめます。
大切なのは、コースの美しさや設計の意図を感じること。
私のツアーでは、スコア120の方でも「人生で最高のゴルフ体験だった」と仰ってくださいます。
Q: 高遠さんのようにコースの「物語」を見つけるコツはありますか?
A: まずはスコアカードをポケットにしまってみてください。
そして、ティーイングエリアに立ったら、ボールだけでなく、風の音、木々の配置、設計家がなぜここにバンカーを置いたのかを想像してみるのです。
コースは常に語りかけています。
その声に耳を澄ますことから旅は始まります。
Q: なぜ経営者にはゴルフ好きが多いのでしょうか?
A: ゴルフはマネジメントそのものだからです。
18ホールという限られたリソースの中で、状況を分析し、リスクを判断し、決断を下す。
このプロセスが経営と酷似しています。
また、自然の中で自分自身と向き合う時間は、多忙な経営者にとって貴重な内省の機会となるのです。
まとめ
オリムピックナショナルでの18ホールは、まるで凝縮されたビジネスプロジェクトのようです。
そこには戦略があり、駆け引きがあり、予期せぬトラブルがあり、そして何より、人と人との信頼関係が試される瞬間があります。
かつてスコアに縛られ、ビジネスに破れた私が、このコースで学んだのは「結果」ではなく「プロセス」を味わうことの豊かさでした。
- EASTコースは、盤面を読む「戦略的思考」を教えてくれる。
- WESTコースは、相手に寄り添う「人間関係の本質」を教えてくれる。
- 19番ホールは、感動を共有する「信頼構築の場」となる。
スコアカードに、この感動は書き残せません。
この記事が、あなたのゴルフを「スコアを競うスポーツ」から「コースとの対話を楽しむ旅」へと変える、小さなきっかけになれば幸いです。
さて、次のホールは、あなたにどんな物語を語りかけてくるでしょうか。
COMMENTS